先日シネマチュプキで行われた映画『さとにきたらええやん』のトークイベントに行ってきました
『さとにきたらええやん』とは高度経済成長期を支えた国内最大の日雇い労働者の街「釜ヶ崎(にしなり)」で38年間続く子どもたちの集い場「こどもの里」を舞台とした笑いと涙の溢れるドキュメンタリー映画です
こどもの里について
“さと”と呼ばれるこの場所では0歳からおおむね20歳までの子どもを、障がいの有無や国籍の区別なく無料で受け入れています。地域の児童館として学校帰りに遊びに来る子や一時的に宿泊する子、様々な事情から親元を離れている子だけでなく、子どもの親たちも休息できる場として、それぞれの家庭の事情に寄り添いながら、貴重な地域の集い場として在り続けてきました。
本作では「こどもの里」を舞台に、時に悩み、立ち止まりながらも力強く成長していく子どもたちと、彼らを支える職員たちに密着。子どもたちの心の揺れ動きを見つめながら、子どもも大人も抱えている「しんどさ」と格闘する人々の切実な姿を描き出しました。(引用:『さとにきたらええやん』ホームページより)
3月11日に行われたトークイベントでは
47都道府県の地元地域に特化したwebマガジン「ジモコロ」編集長の徳谷柿次郎さんと「SmartNews」でNPO支援活動をされている望月優大さん、映画監督の重江良樹さん3人によるフリートークが行われました
目次
トークイベント
(左からジモコロ柿次郎さん、SmartNews望月さん、監督重江さん)
重江:
まず『さとにきたらええやん』を見てどう思いました?
柿次郎:
子どもめっちゃ大事だなって 当たり前のことなんですけど
子どもが軸にいないとおっちゃんとかとのコミュニケーションって取りづらい
祭りとかの場面を見て思いましたね
自分に子どもがいないと子どもと大人が遊んでるシーンになってこない
どこのコミュニティにもこどもが常に必要
地域に子供が少ないっていうのも突き詰めると「街にこどもがいる景色があるかないか」なのかなって思いました
重江:
変わってる人とか日雇いとか生活保護とかそういうの関係なしに、子どもたちは自分が話したいとバーって行っちゃうんで、そういう人たちと繋がる力、人と人をつなげる力とかが地域の祭りとかに繋がっていく
そういうのはすごい子どもの力なのかなって僕も感じています
柿次郎:
これは何年くらい密着していたんですか?
重江:
2013年から2015年の2年くらいですね
柿次郎:
その2年間という時間で子どもがすごい成長してるなって
主人公が30歳のおっちゃんとかだったら2年であんな変化ないじゃないですか笑
そういう意味でも子どもってすごいなって思いました
望月:
僕はこの映画を見て思ったのは、子どもの話なんですけどやっぱり大人の話というか特に親の話だなと
最初にデメキンさん(「こどもの里」理事長のあだ名)が「この里は誰でも来れて、大人にとっての休憩場所でもある」って言ってたじゃないですか
子どもがすくすく育つには「周りにいる人たちの心が健康な状態」になるべくなっていないと厳しいっていうことだと思うんですけど、そうであることが当然ではなくて親のために支え合うシステムっていうのが必要だなと思いました
お母さんが全然友達いないっていうのはすごいきついだろうし、きついときに頼れるっていうのはすごいいいことだから、他の地域でもできたらいいなって思いました
重江:
デメキンさんも学区に一個、日本中に里を作れって言ってます
“里”っていいですよね
柿次郎:
“里”っていうのが名前がいいですよね
フラットに言える言葉だし、特別支援なんたらとかだと本人もちょっと嫌がったりとか自分は違うんだって意識をしない感じですよね
望月:
民間の強みですよね
柿次郎:
村でもないし、里親っていうのも言葉としてもあるしね
初めて里と向き合えますね
たけのこの里以来ですね
望月:
それ仕込みのネタですか???笑
遊びの場所がベースにある「こどもの里」
(引用:『さとにきたらええやん』ホームページより)
重江:
もともと「こどもの里」は公的なものとかそういう場所じゃなくて、あそび場を作りたいっていって始まったんですよね
日雇いの街の中で肩身狭く遊んでいる子どもがいっぱいだってこともあったんでね
未就学児が6,000人もいたんです
柿次郎:
学校に行けない子どもが6,000人!?
望月:
すごい数ですね 6,000人って!
重江:
そういった子たちを見て、子どもたちに健全な場所を作ろうって思ったみたいなんですよ
1週間とか1ヶ月預かるとか一人一人に対応してたら自然と今の「こどもの里」という場所になっていった
望月:
実際「こどもの里」には何人位の子どもが関わってるんですか?
重江:
住んでいるのはのは6人ですね
ファミリーホームっていう国の制度があってその制度が小規模住居だから定員が6人なんです
他にも夜勤で親が働いてる時とかにはお泊まりで預かったりしている
基本的には「誰でもいつきてもいい遊び場」なんです
その中で、あれ?ちょっと今日この子おかしいなーとかが毎日来ているとわかるじゃないですか
毎日来てると子どもたちも家のことを相談できたりするのもありますね
望月:
子どもは人を見たりするから、いきなり心は開けないですもんね
西成区を知ってる人はどれくらいいる?
柿次郎:
ちなみに西成、釜ヶ崎を知っている人っていますか?
(6,7人くらい手をあげる)
柿次郎:
行ったことある人はいますか?
(一人が手をあげる)
柿次郎:
本当にいかないと何もわからない場所ですよね
重江:
ちなみにどんなイメージですか?
お客さん:
一度見た方がいいよってことで友人と一緒に歩きました
失礼ながら興味本位で通ってみたんです
その時は子どもの姿とか全く見れなかったので、こんなに明るい子どもたちの姿を見れてよかったです
なんか映画を見て改心したというか、ありがとうございました
重江:
素敵な感想ありがとうございます
柿次郎:
僕も何回かいってるけど子ども見たことないですよ
重江:
まぁ時間帯によるんですけどね
学校とかもあるし、休みの時とかは遠足をしてたりするので常にいるわけではないよね
柿次郎:
今僕も東京の山谷の方に住んでていて、景色が1日で6種類くらいあるんですよ
早朝、午前、昼、夕方、夜、深夜の絵がそれぞれあって全然違うってことに最近気づいて、西成も景色が普通の街よりも多いんだろうなって
重江:
24 時間でいうとたしかにそうですね
労働福祉センターのシャッターが5時に開くんですけど、4時くらいから手配業者とあれこれ準備したりして
近くの喫茶店とかでコーヒーを飲んだりしている
仕事がとれなかったおっちゃんとかは昼からぶらぶらしたり、酒を飲んだりしていますよね
労働者の高齢化が進んでいるんでドヤ(簡易宿泊場)だった場所が福祉アパートになって生活保護を受けて暮らすパターンが多いんですけど、そういったおっちゃんとかが街中にいたりとか・・・
朝は子どもが学校行く時間になって、昼は昼の景色があって、夜は飲み屋さんも多いので中国人・韓国人系のネオンをきらびやかにしたカラオケ居酒屋とかが増えている
柿次郎:
ここ3年4年の話ですよね
シャッター商店街で数年前まで閉まっていたのが、8,9割がカラオケ居酒屋になっている
好奇心で訪れてみていい場所
柿次郎:
僕が興味持って入ってたら全身ピンク色のスーツ姿を杖をもったおじいちゃんとかがプルプルしたりしていて・・・
(ピンクおじさんのイメージ)
重江:
不思議で面白いことが転がっている街ですよね
柿次郎:
好奇心で西成を訪れてもいいんじゃないかなって思ってるんですけど、どうですかね?
怖いイメージとかあるじゃないですか?オススメの時間とかあるんですか?
重江:
僕も好奇心でいった感じなんですよね
それこそ好奇心で社会的の問題のある街「西成」だって言ってね
それでたまたま「こどもの里」から子どもがでてきてみたいな・・・
もともと映像のジャーナリストを目指していたんです
一回行ってみて何と出会うかみたいな感じでいってみるといいと思うんですよね
柿次郎:
実際危ないんですかね?今も
重江:
危ない目にはあったことはないですよね
どこの街にいっても危ない目に合うひとは合うし、危ない人はいるし
おっちゃんとか酔ってるだけなんでね 面白いおっちゃんとかもいますからね
柿次郎:
歌舞伎町の方がよっぽど危ないですよね
変わりつつある街
柿次郎:
2年後ぐらいには星野リゾートとかも新今宮駅の反対側に出来るみたいですしね
星野リゾートですよ!1泊7万とかですかね わかりませんけど笑
一方西成で安いとこ700円ですもんね テレビついて800円みたいなね
重江:
本当にそんなもんなんですよね
今でも今でも外国人向けのとこでも2000円とか3000円くらいで泊まれますしね
柿次郎:
100倍ですよ!(一泊の値段の違いが)
望月:
100倍すごいっすね
重江:
そこに向けて街も変わっていくだろうなって
新今宮って栄えてはないけど交通の便とかめちゃめちゃいいんですよね
その中で労働センターの建て替えも決まっていて、労働機能は残るんですけどどれくらいになるのかはわからないですし、外国人の観光客も増えているし
柿次郎:
労働センターも星野リゾートとかやってくれないですかね?
望月:
かしこくやってくれそうですよね笑
柿次郎:
お金持ちがいくキャンプ「グランピング」とかおっちゃん向けにしてくれそうだよね
望月:
テントの中にベットがあるみたいなね 一部の層しか行けないやつね
柿次郎:
山谷も東京オリンピックに向けて変わっていて、
昭和の高度経済成長の変化が山谷とか西成とかに小さく起きているのかなって思っていて、昭和の名残があと数年しかみれないかもって考えたら見に行った方がおもしろいだろうなって思ってます
望月:
まだいったことなんですよね(西成)いきたいです
柿次郎:
いきましょうみんなで!(西成)ツアーをしましょう!
望月:
『釜ヶ崎いったらええやん』ですね
重江:
たしかに建物が変わっていくんでね
建物が変わると街も変わりますし、景観も変わるし、歴史自体がなくなったりとか見えなくなったりしていきますよね
ジェントリフィケーション(再開発による貧困層の排除)っていうらしいんですよ
そこでちょっとゆれてるみたいなんですが
柿次郎:
この映画を見て終わるんではなく、もう一個関心を広めるのがいいですよね
望月:
街の見方とかを変えるとおもしろいですもんね
重江:
西成も山谷もぜひぜひ訪れてもらえたらなって思います
重江、柿次郎、望月:
今日はありがとうございましたー!!
トークイベントを終えて
ぼくのなかで「西成区釜ヶ崎」のイメージは正直いいものではありませんでした
日雇い労働の街で危ない街という印象しかなく、訪れる理由もなかったんですよね
でもそれはただ街のことを何も知らないだけで、イメージでしかありません
東京で言えば山谷という地域が同じような場所にあたります
田端からだと車で10分くらいの街で近い場所なのですが、通ったことがあるものの実際山谷のことも何もわかっていません
東京に住んだことのない人が荒川区や足立区などに対していい印象を持っていないのと同じことで、実際に住んでいる人や行ったことのある人とのギャップが生じているのが現状なのかなと。僕のような人もいっぱいいるのではないでしょうか?
情報だけでなく自分の目で見て、そして感じ自分の記憶として残していくことも必要なのだと感じました
映画を見てもほんの一部を知っただけで、まだまだ知っているわけではありません
一度訪れてたとしても住んでいる人たちとは違い分からないことももたくさんありますが、一度は訪れなくてはいけない場所だと感じました
また子どもたちの重要さというのも改めて感じました
自分の住んでいる街「田端」にとっても子どもは次の世代を作っていく大事な存在であることを今の大人たちが理解して行動していけば、もっといいまちづくりが出来る予感がしました
「さとにきたやええやん」見てきました
地域にとって子どもはやっぱり大事だし、今後の街を作っていくのは次の世代なんですねー
そのために今自分が出来ることを精一杯やる!
写真はその後のトークイベントの様子(ジモコロ柿次郎さん×Smartnews望月さん×監督重江さん) pic.twitter.com/7d0aSqcqiI— さくさく(櫻井寛己) (@pirorin39) 2017年3月11日
『さとにきたらええやん』映画情報詳細
公式ホームページ:http://www.sato-eeyan.com/
劇場情報:ホームページをご覧ください
監督:重江良樹
プロデューサー:大澤一生
構成:大澤一生
撮影:重江良樹
編集:辻井潔
「こどもの里」詳細
1977年、釜ヶ崎のこどもたちに健全で自由な遊び場を提供したいとの思いから、こどもたちの遊び場(ミニ児童館)「子どもの広場」としてスタート。
1980年に現在の場所で「こどもの里」を開設以降、放課後の子どもたちの居場所としてだけでなく、生活の不安定さに揺れる子どもたちや親たちのサポートをし続けている。家庭環境によって行き場のない子どもたちのニーズも高まり、緊急一時保護の場、生活の場の提供も。
2013年、大阪市の「子どもの家事業」を廃止を受けて存続が危ぶまれたが、「特定非営利活動法人(NPO法人)こどもの里」を設立し、現在も変わらず、こどもが安心して遊べる場の提供と生活相談を中心に、常にこどもの立場に立ち、こどもの権利を守り、こどものニーズに応じる、をモットーに活動を続けている。
名前:特定非営利法人こどもの里
ホームページ:http://www.eonet.ne.jp/~kodomonosato/
住所:〒557-0004 大阪市西成区萩之茶屋2丁目3番24号
TEL&FAX:06-6645-7778
目的:この法人は、地域の保護者、住民、教育機関、行政機関、社会福祉協議会等と連携し、こども自身の育ち、保護者の子育てに関する支援、情報の交換や収集発信、講座や集会の開催、人材サークルの育成、調査研究などの活動を協働して行うことで、地域における子育ちや子育て、こどもの権利擁護を支援するネットワークを拡げ、地域づくりを進める。そして、この地域との連携を軸にこども自身の育ちと保護者の子育てに関する支援を包括的に行い、すべてのこどもに対してこどもの権利を支援し、あそび、学習、生活の場、居場所の提供及び子育ち、子育てに関する事業を行い、社会の未来を担うこどもの福祉と権利擁護に寄与することを目的とする
事業内容:※大阪市留守家庭児童対策事業(学童保育) ※小規模住居型児童養育事業(ファミリーホーム) ※大阪市地域子育て支援拠点事業 (つどいの広場) ※児童自立生活援助事業(自立援助ホーム) ※自主事業 ≪緊急一時保護・宿泊所、エンパワメント事業、訪問サポート事業、中高生・障碍児居場所事業等≫
理事:理事長…荘保共子 理事…山縣文治・湯澤直美・田中康夫・神林宏和・山口敏枝・杉村次郎・植月智子・植月健司・石部雅子・関口淑枝 監事… 乾繁夫・木原万樹子
シネマチュプキタバタ場所詳細
店舗名:「Chinema Chupki Tabata(シネマチュプキタバタ)」
ホームページ:http://chupki.jpn.org/
定休日:水曜日
営業時間:10:00〜23:00(上映時間はホームページを確認ください)
料金:一般 1,500円/シニア(60才以上)1,000円/学生 1,000円/中学生以下 500円
住所:〒114-0013 北区東田端2-8-4 マウントサイドTABATA
電話番号:03-6240-8480
アクセス:JR田端駅北口より徒歩5分
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【お知らせ】田端マップが完成!
田端の飲み屋さんやお食事処など地図のように見れます。TABATA MAPへ
田端の立ち飲みといえば タバタバー 。
こちらに、リアル版タバタローカルマップが完成!
あなたの知らない田端が見つかる?! タバタバーへ