田端の”街”を一緒に耕そう!小商いの会・小大家の会イベントレポート

「これから田端は、もっともっと良い街に変わっていくに違いない!」

先日、そんな風に思ったトークイベントに参加させていただきました。2021年の1月下旬に、「小商い(こあきない)の会」、「小大家(こおおや)の会」と題したイベントが、2日間に渡って行われたので、その様子をレポートします!

小商い・小大家ってなに?

そもそも「小商い」、「小大家」とは、何なのでしょう。あえて”小”とつけているのには理由があります。その名のとおり、まずは小さな規模から商いや大家を始めてみませんか、というメッセージが込められているのです。

イベント告知の様子(本イベントはすでに終了しています)

商売も大家も、規模は大小さまざま。例えば週に1回ポップアップショップを開催することも、大企業を経営することも、”商売”と言えますよね。

今回のイベントでは、エリアを北区・田端と周辺のエリアに限定し、まずは小さな空間や副業などから商売を始めてみることや、自宅の軒先や空きスペースを貸し出すことで、小さく大家を始めてみることの面白さを語り合いました。

商い大家を始めてみたいけれど、どこから何を始めたら良いのか分からない。現在小商い・小大家を始めたはいいけれど、横のつながりが作りたい……。そんな職業の垣根を超えた様々な方々が、二日間でおよそ30名ほど集まってくれました。

オンラインでの開催となりましたが、お互いの活動をシェアしたり、参加者同士でのコラボレーション案が生まれたりと、充実した時間となったようです。

主催は、田端に拠点を持つ建築家の二人

今回イベントを企画したのは、田端界隈で「勝亦丸山建築計画」を運営する、勝亦優祐さんと丸山裕貴さん。

主催の勝亦優祐さん(写真左)と丸山裕貴さん(写真右)

二人は田端と静岡県富士市に拠点を持ち、企業や個人から請け負った建物の建築や設計を主に行っています。同時に古い住宅を賃貸、リノベーションして造られたシェアハウスを、自らが積極的にプレイヤーとなって運営しているのです。2017年に田端一丁目に「西日暮里のシェアハウス」を、2020年9月には、同社の東京拠点兼住宅「田端山荘」を新たに立ち上げました。

西日暮里のシェアハウスの施設内の様子

他にも勝亦さんの地元である、静岡県富士市のシャッター商店街にある立体駐車場で行った、らせん型フェス「商店街占拠」というイベントでは、数千人を集めた経験も。建築・設計を武器に、多岐にわたって活動をしています。

富士市のシャッター商店街にある雑居ビルをリノベーションし、テナントが多数集まる商業施設へと生まれ変わらせた実例も

お二人がいつも大切にしているのは、「デザインオペレーション」という考え方。

やりたいことありきで建物を新しく設計するのではなく、既にある建物に、どんなソフトを入れれば、地域の方々に喜ばれる場所に生まれ変わらせることができるのかを考え続けています。

また出来上がった状態で完成、以降手を加えないという従来の設計スタイルではなく、入居者などの声を取り入れながら、恒常的に価値を高めていく取り組みもしています。

目の前に大きな庭もある「田端山荘」。より居心地の良いスペースになるように、現在手を加えている最中とのこと

できあがったらはい終わり、ということではなく、日々変わり続けるニーズに応えながら少しずつアップデートし続けていくという設計スタイルは斬新で、多くの参加者の方から驚きの声が上がっていました。

様々な活動を行う、地域プレイヤーの存在

今回行われたイベントでは、主催のお二人の活動紹介のほかにも、既に様々な活動を行っている地域プレイヤーの紹介も行なわれました。

小商いの会・登壇者

西日暮里の駅前の新施設「西日暮里スクランブル」の一画にあるジェラート屋「ぐるぐるジェラート」の店長を務める、鶴元怜一郎さん。”地域をぐるぐる混ぜる”をコンセプトに、地域の方との交流を楽しみながら運営されています。このイベントの事務局も担当しています。

「須貝珈琲」店長の、須貝孝太さん。現在お店は休業されていますが、かつて主催の勝亦さんらの設計事務所を間借りして、週末だけの珈琲屋をしていました。

東京都東尾久で立飲み屋「タバタバー」の店主であり、田端の地域情報Webマガジン「TABATIME」編集長の、櫻井寛己さん。生まれ育った田端を盛り上げる活動をしています。

小大家の会・登壇者

荒川区の熊野前商店街の一画で、事務所兼住居に住まいながらクリエイターとして活動するAnne Grossさん。ドイツ人のご夫婦で、これまで建築の展示企画や演奏会などのイベントも行ってきました。街の人々を巻き込みながら様々な活動をしています。

翁長宏多さんは、武蔵野美術大学の2年生。地域の空き家をキャンバスに見立て、白く塗り、創造性溢れる空間を増やすプロジェクト「white squat」を主催しています。田端の街並みや雰囲気に心を奪われ、田端を中心に活動することに決めたのだそう!

また参加者の方の経歴もさまざま。駒込でフリーペーパーを作る活動をする漫画家の方や、デザイナー兼大家として活動する方、造園業を営む方などなど……。

個性豊かな参加者の方からは、主催のお二人に「大家さんとどのように関係性をつくっていったのか?」、「実際に空き物件を見つけた時に、どんな視点で再活用の方法を考えるのか」などの質問が積極的に交わされていました。

互いの力を持ち寄って、田端をより良い街に耕していこう

イベント開催後、より深く二人に相談したい方を中心に個別相談会を実施したところ、たくさんの参加者が申込みをしてくださったのだそう。さらにfacebookのコミュニティ「タバタガヤス」を立ち上げ、互いの活動を刺激し合う場所をつくって今に至ります。

現在17名程の参加者のいる、facebookコミュニティ「タバタガヤス」

今後目指していきたい方向性を、主催の勝亦さんと丸山さんに伺ってみました。

勝亦さん:

「今回のイベントでは、地域と関わりながら行動を起こしていきたい”プレイヤー”と、場所を持つ”大家さん”をつなげる一歩を踏み出すことができました。今後はその繋がりを活用して、実際にプロジェクトを立ち上げていくための準備をしていきたいと考えています。

僕らがやるべきことは、種を植えたい人、育てたい人を見つけて、繋げること。そしてその種がしっかり育つように、土壌を耕し続けること。

時には『こんなイベントをやりましょう!』と僕らが種を植えて、プロジェクトを立ち上げることもあるけれど、そればかりではありません。あくまで主体的に行動できる人が集まり、小さな行動を起こし続けていくことが大事だと考えています」

地域で目立った活動家がいると、統一感が生まれて良いこともある反面、新たな発起人が生まれづらくなることを危惧している、と勝亦さんは言います。いつでも、誰でも参加ができて、より良い街づくりのために活動をする土台を作ってあげること。それこそが二人が目指す役割のようです。

丸山さん:

「住んでいる街と、自分が求める生き方を一致させるということは、本当の意味で豊かな暮らしなんだと思います。例えば美味しい珈琲を近所で飲めるようになりたいと思ったら、珈琲を淹れられる”プレイヤー”と、スペースを貸してくれる”大家さん”を見つけられれば、実現しますよね。

今回のイベントで出会った、小商い・小大家がセットになることで、憧れだったそんな暮らしに一歩近づけるような気がします。これから田端はもっともっと面白くなっていきますよ」

*

私は田端で暮らし始めて、もうすぐ3年。物足りなさを感じることもあり、新しいお店が欲しい!じゃあ自分でやってみようかな?なんて考えたこともあったけれど、正直一人では無理だと、半ば諦めの気持ちを持って生活をしていました。

けれど今回のイベントに参加し、勝亦さん、丸山さん、そのほか多くの仲間と出会ったことで、自分と同じような考えを持った方が多くいたのだということに気づかされました。

さて私だったら、このコミュニティをどう使おう?

田端には女性が一人で入りやすい飲食店がないから欲しいな。どんな場所だったら皆がうれしいか、女性同士で会話してみたいな。コンセプトがまとまったら、空き物件を探しにツアーを組んで、その経過を報告していこうかな……。

夢は広がるばかり!みんなで小さな種を持ち寄って、今後も主催の二人を中心に、私も自分事として田端の街づくりに関わっていきたいと思います。

「タバタガヤス~田端を耕す人たち~」facebookコミュニティ

https://www.facebook.com/groups/177810847266419/

この場では互いの活動を支援し合ったり、何か考えやアイディアをシェアすることに活用したりするだけでなく、ときにはリアルな活動の一つとして、田端周辺を散歩しながら空き家を散策し、勝亦さんや丸山さんの建築家の視点を教えていただく場なども企画しています。

ぜひ自分も何か関わりたい!と思った方は、ぜひ参加してみて下さい。みんなで一緒に、田端をもっと面白い街にしていきましょう!

主催:勝亦丸山建築計画 http://katsumaru-arc.com
事務局:鶴元怜一郎

※本イベントは「東京北区を創業であふれるまちに」をビジョンに掲げ、コミュニティビジネス創業の促進を図るため、北区コミュニティビジネス創業支援事業の一環として実施されています。

https://www.tokyokitaku-cbnw.com

文・櫻井朝子

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