※この記事は田端本のクラウドファンディング企画のリターンとして取材をさせて頂いたものを掲載しております。
自分が普段生活をしている中で、「住んでいる地域に、もっとこうしたサービスがあったらいいのに」と感じたこと、ありませんか。
例えば子どもを産んでパパやママになり、仕事を休んで社会との関わりが持てずに悩んだとき。「気軽に近所のパパ友やママ友と話せる場が欲しい」「息抜きができる場所がほしい」と考える方って多いかもしれません。
近所に悩みを相談できるようなカフェなどの飲食店があればいいけれど、もしなかったら……。
そんなとき、制度や居場所になるような場が豊富にある町へ引っ越すことも一つの手段。でも、あなた自身でそんな場やサービスを作ったり、場を作ろうとしている仲間をサポートしたりする選択肢を考えてみるのも、面白いかも。
今回ご紹介するのは、NPO法人「コミュニティビジネスサポートセンター(以下CBS)」。CBSは地域コミュニティを基盤とした、新しいビジネスの種を一緒に育て、創業前後の支援を行ってくださる伴走者のような存在です。
CBSが拠点を構える赤羽の事業所と、運営しているコワーキングスペース「アカコ」で、お話を伺いました。
コミュニティビジネスって何だろう?
ーいつ頃から活動をされているのでしょうか
CBS 宮本さん(以下:宮本さん):
CBSは法人として2002年に立ち上げられました。事務所は、千代田区、そしてここ北区赤羽に構えています。今から約20年前になりますね。
それまでは、地域のことを自分の手で作り変える、なんてことがイメージ出来ない時代でした。でもこれから高齢化社会になり、行政の財政もあまり期待できなくなる未来を想像したときに危機感を感じ、代表の永沢が立ち上げたことがきっかけです。
地域の課題解決といっても、『市民活動やボランティアをしましょう!』ということではありません。あくまでも事業として成り立つものを、自分たちの手で作っていかなければならない、という想いをもって、コミュニティビジネスの担い手や支援者などの人材育成、実際に事業を始めてみたい、という方への創業支援などを主な活動としています。
ー「ソーシャルビジネス」や「コミュニティビジネス」など、まだまだ聞き慣れない言葉のような気がしますが、その違いは何ですか
宮本さん:二つのビジネスの円は、重なるところもあるし、そうでないこともある認識です。
例えば幼児保育などは日本全国同じ課題を感じているから、そこに対してビジネスを行えばもしかしたら全国に波及する可能性はありますよね。それがソーシャルビジネス。
一方で、東京都北区でやっていることを、仮に大田区にもっていってもうまくいかない事業ってあると思うんです。そうしたエリアや地域にこだわって作られたものがコミュニティビジネスだと考えます。
地域独自の農産物や海産物に、地域独自のストーリーをつけて売る、ということは、コミュニティビジネスの領域ですね。
分かりやすい例でいうと、富士宮焼きそば。あれは元々地域で食べられていたものに名前をつけて、分かりやすい特徴をつけて地域活性化につなげましたよね。
私たちがこだわっているのは、その地域にある課題を、地域独自の魅力や価値を付与してビジネスとして成立させるようにすること。それを総称して「コミュニティビジネス」という言葉を使っています。
「コミュニティビジネス」って、すごく広くとらえられる言葉ですよね。だからこそずっと生き残っている言葉なのかな、と思います。
ー実際にどんな方がコミュニティビジネスを始められるんでしょうか
宮本さん:我々が実際に見てきたコミュニティビジネスをやっている方々は、別に「コミュニティビジネスを立ち上げたい!」と言って始めた人は少ないんですよ。みんな必要だから、始めている。
まずは地域に必要なことを、仲間と相談して、空きテナントで何か始めてみるなど、小さな活動として始まったものがほとんどです。
私たちは実際に事業を始めた方々に話を聞いて、事例としてあげさせてもらい、その後に続く「何か始めたい」という気持ちを持った方の背中を押す、というのが方針としてありますね。
ー先ほど地域ならではの課題を解決するのがコミュニティビジネスだと伺いました。たしかに、地域によって人・お金・文化も違いますよね
宮本さん:ソーシャルビジネスは全国の方から共感を得て、「それは必要だ!」という話からプロジェクトがスタートすることが多いんです。でもコミュニティビジネスの場合は、「ローカルの人にしか分からない価値」みたいなものに目をつけて発信していく、という感じがしますね。
社会的な課題はだれでも「いいね」とは思ってくれますが、汗をかいて一緒に動いてくれる人って、物理的に離れていたら難しいじゃないですか。でもローカルのことで、地域愛みたいなものに根ざして活動する分には、面白いものが生まれてくる可能性がある。
机の上で考えていても分からないけど、やってみるうちにいろんな人に出会って、開発されて、面白いものができて、それが受け入れられていく、みたいな。
商品や企画がいい、というのはもちろんあると思うんですけど、作り上げていくまでのプロセスを共有しているのが、コミュニティビジネスの魅力なんだろうな、と思います。
コワーキングスペース「アカコ」を持つことの価値
ー今私たちがお邪魔しているCBS・赤羽事務所の4階は、コワーキングスペース「アカコ」として貸し出されているんですね
CBS 小林さん(以下小林さん):
アカコは2017年の夏に始まりました。その頃からずっと、CBSとしてコワーキングスペースの運営をやりたい、という想いがあったんです。それも単なるコワーキングスペースではなく、「コミュニティビジネスを支えていける場」を提供したい、と。現在は浦和にも「ウラコ」というスペースを増やし、合わせて20社ほどの方が登録されています。
ここでは、元々CBSの他の事業で培ってきた行政や企業、NPO、金融機関などのつながりと、アカコやウラコに入居してくださる人、そしてここ赤羽の資源を融合させて、新しいビジネスをやっていける場所にしていきたい、と考えています。
東京では、創業間もない方に融資をするサポートもやっています。それから融資をした方に対して、5年間、訪問して事業の相談にも乗ります。資金繰りに困っていれば、補助金や助成金の話などの資金制度を紹介しますね。
入居者の方々の力を合わせて、一つのプロジェクトを推進していくことがコワーキングスペースの最大の魅力です。現在の入居者は、デザイナーやIT系の方ももちろんいらっしゃるのですが、政治家や弁護士、中小企業診断士、税理士の方などもいらっしゃいます。
ー拠点を持つことの「価値」ってなんでしょう
宮本さん:コミュニティビジネスに関する我々のセミナーで話を聞いてくださった方が、どんどん興味を持ってくださるんですよね。その次に欲しいのは、やっぱり拠点となってくる。拠点ができるともっと活動の幅、人脈が増えていきます。
現在はコロナ禍で交流会を開催すること自体が難しくなってしまいましたが、私たちはどんなセミナーでも交流会の時間を必ず設けるようにしていました。
その理由は、やはり人とのつながり。
もともと私たちが知識を授ける、ということだけではなく、起業したい人たちが自立してやっていくために、何が必要かと考えた時に行きついた答えが「人」でした。
私たちはノウハウを提供するということはできます。あとは相談する先や共同できる仲間、支援できる会社を紹介し、つなげていくこと。人とのつながりを大きくしていき、起業家として自立していくことが大切だと思っています。
「コミュニティビジネス」という枠組みで交流をすると、上下関係はほとんどなくて、「同じ地域に住んでいる」という関係でつながり、その後飲み仲間になることもあるんですよね。
それって少し、会社組織でやっていたことと違うんですよ。一緒に地域の課題を解決するという点では、ヒエラルキーがなく
CBS 佐藤さん:
アカコのような場所を使うことで、コミュニティビジネスに対する感度の高い方と出会う機会が頻繁にある、というのが大事なのだと思います。ここにいるだけで偶然の確率が上がるというか。そういう居場所のような存在になれたら、と考えています。
一回交流会であって意気投合して終わり、じゃないんです。コワーキングで頻繁に顔を合わせていれば、スムーズに協業などにつながれるんじゃないかと。そういう場所って、他にもあるようで、なかなかない気がするんです。
交流会についても、単なる異業種交流会ではなく、「コミュニティビジネス」という同じ共通目的がある人たちが集まれることが大切なのだと思います。
入居者の方と創り上げていく、アカコの未来
ーまだまだ始まったばかりのアカコやウラコの”拠点”ですが、今後はどのようにこの場所を活かしていきたいですか
宮本さん:これからのことでいうと、働き方改革、ワークライフバランス、withコロナのような、様々な視点も取り入れながら、この場所を見ていかなければいけません。
他にも例えば、これから何かの資格をとるという方もサポートさ
ー赤羽や浦和の他にも増やそうとしている動きはあるんでしょうか
宮本さん:まずは二つの拠点の足元を固めたいですね。いわゆる普通のコワーキングとの差別化を、もっとしていきたい。
作業環境がいいとか、駅から近いとか、仕事を単にするためのものだと思われてしまうこともありますが、違います。もう少し入居者の方々が充実してくれば、そこで初めて私たちの価値が高まってくるでしょう。
価値っていうのは、我々CBSが作っていくものももちろんあるけれど、入居者の方自身で作っていくものでもあります。そうして理想とするモデルができてくればいいですね。
起業をしてしばらく経った時に、「やっぱり自分がやりたいことはコミュニティビジネスだな」って思った時に、こういう場所があるんだという選択肢を思い出してもらえたらうれしいです。
一朝一夕でできることではありませんが、一人で営業ができる人や、一人で抱えきれない量の作業を持っている人が集まり始めて、互いに良さを知り、年月をかけて個々の能力が結集して、一つのプロジェクトを行えるようになれれば、理想的ですね。
小林さん:自分が必要だと思うものをサービスとして提供したいと思った時に、一人ではできないことの方が多いんです。仲間が見つからないとか、融資先に困っているとか。それを支援する機関は必要です。でも行政はハードルが高い、というときには、一人で悩まないで、ぜひNPOを頼ってもらえたら、何かお手伝いできることがあるんじゃないかな、と思っています。
宮本さん:地域課題って誰しもが心の中に持っているものだけれど、大半の人が諦めて、「こういうもんだ」と思って暮らしてしまう。
でも同じコロナ禍だったとしても、「こんな時期だから外には行けない」といって引きこもってしまう人と、「こういう時期だからこそ、感染対策をしながらも集まれる場をもっている」という人がいますよね。
後者のような暮らし方が地域でできているのほうが、きっと幸せなのではないかと思います。
*
今回取材をして初めて、このようなサポート団体があることを知りました。自身の身の回りのことを解決するために何かサービスを始めたいと思ったけれど、八方ふさがりになって前に進まなくなったら。そのときはぜひこのCBSの扉を叩いてほしい。
「ないものは作ってしまえばいい」
そう考えられたら、この町で暮らすことが、もっと楽しくなるかもしれません。
※この記事は田端本のクラウドファンディング企画のリターンとして取材をさせて頂いたものを掲載しております。支援していただきありがとうございました。
施設情報
会社名:特定非営利活動法人コミュニティビジネスサポートセン
代表者:代表理事 永沢 映
住所(アカコ):東京都北区赤羽1-59-8 ヒノデビル4F
ホームページ:https://akaco.cb-s.net/
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